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2020年夏、岐阜市の繊維問屋街に突如現れた壁画
2020年8月後半、Twitter上にとある壁画の画像が拡散されていた。描かれた場所は
、岐阜のグランドキャニオンと呼ばれているらしい岐阜駅北側の繊維問屋街のビルの
一角だ。突如現れた鮮やかな色彩の壁画には、亀や魚たちが描かれ、海なし県であ
る岐阜の人にとって、海を連想させるものは気分を高揚させるようだ。
この壁画を描いたのは、岐阜県各務原市出身のアーティスト【Madblast Hiro】さんだ。
柳ヶ瀬のイベントなどでもライブペイントで絵を描かれており、今回はビルの半分の大きさの約8mもの大作をひとりで手掛けた。今、注目のストリートアーティストにインタビューしてきた。
壁画を描くことになったきっかけ
ー今回、ビルの壁画を描くことになったきっかけはなんだったのでしょう?
依頼いただいた守富環境学総合研究所様がウォールアートに興味を持たれていて、知人からのご紹介で今回の壁画が実現しました。
ーそうなんですね。亀や魚が描かれていますが、テーマはあるんでしょうか?
「環境」がテーマにありました。守富環境学総合研究所様が「環境」をテーマにリサイクルの研究してるのもあるからです。ウミガメは絶滅危惧種になっており、環境問題で取り上げられる動物である反面、国や地域によっては、幸せを運んでくれる象徴でもあります。優雅に飛ぶ姿をカラフルに描くことで色鮮やかな未来を表しています。そのウミガメをメインに「陸・海・空」の世界を共存させて、見ているひとたちそれぞれが物語を考えたり、楽しんでもらえたらと思って壁画のラフを考えました。
ーとても明るい雰囲気で明るい未来を連想させます。岐阜は海がないので、そういう部分でも喜ばれるでしょうね。
(岐阜県は)海なし県なので、ヤシの木も描いたりして、南国の雰囲気をだしつつ、こ
の場所に海をつくろうと思いました。
壁画の制作について
ー壁画は、いつから、どのくらいの期間で制作されたんですか?
下地は事前に塗ったのち(2020年)8月の8日から本格的に描き始めて、約10日間で描き上げました。
ーたったの10日間で描き上げたんですね。すごい!すべてお一人で描かれたんですよね?
1人で描きました。
ー8月から描かれたということは、炎天下のなかで描き上げたんですね。
以前、外で活動することもあったので暑さにも強いんですが、さすがに暑かったですね。
ーペンキで描かれているんですか?
この作品はペンキで描いています。絵によっては、絵の具やスプレーなどを使って描
くこともあります。
ー約8mということですが、これだけの大作を手掛けたのははじめてですか?
柳ヶ瀬のレンガ通りで描いた、かわせみの作品は6m×6mで、豊田の壁画プロジェクト(保見アートプロジェクト)の作品(天井画)では10m×10mのものも手掛けましたが、高さで言うと一番高い(作品)ですね。
ー壁画の作業の流れというと、下絵を見ながら描くんでしょうか?
ラフの絵を下に、壁に描いていきます。大きい絵なので、ラフ画にもあらかじめグリッド線(一定間隔に入れた目安になる線)を入れてあり、壁にも同様に黄色い糸でグリッド線を引きました。その線に合わせて、下書きしていって、着色していきました。
ー実際やってみて違いはありましたか?
実際、足場を組んでみると大きいなというのはありましたね。
ー(暑い中、10日間という短い期間で約8mの壁画を描き上げる精神力や体力に脱
帽です。)
世界的なストリートアーティストKAZZROCK氏の影響を受けて
ー昔から表現することに興味があったんでしょうか?
昔から、もの作りとか、絵を描いたりすることが好きでした。ぼくは元々ブロックのように模様を積み上げたり並べたりして絵を描いているんですが、海外のおもちゃのブロックの影響を受けましたね。小さい頃は、レゴの様なおもちゃのブロックでよく遊んでいました。模様のモチーフは炎を単調化したものなんですよ。
ーそれから、本格的に活動をはじめたきっかけはありますか?
17,8歳でテレビで観た KAZZROCK さんのグラフィティアートに魅せられました。ストリートでこういうかっこいいものを描く人たちがいるんだと思って、ストリートアートに興味を持ち、スケッチブックにモノマネするように描き始めたのがきっかけです。
ー元々絵を描いたりしていたけど、そこからストリートアートに興味を持ったのがきっかけなんですね。
そうですね。岐阜出身のアーティストでNOVOLさんという方がいるんですけど、その方の絵にも衝撃を受けて、ストリートの中でもグラフィティだけじゃないということを知り、表現というか概念が壊されたというのはありますね。多治見出身の画家の 木全 靖陛 さんという方もストリート上がりで、今では壁画の他にも陶壁画も手掛けたりされているんですがその方からも刺激を受けています。
独学で学び、表現をつづける日々
ー学校に行ったりせずに、独学で絵の勉強をしたんですか?
美術学校も行ってないですね。工業高校の建築関係でした。
ー活動歴は約12年ほどとのことで、はじめての作品はいつ手がけたのでしょうか?
20歳の11月頃に高島屋南商店街で描かせてもらったのがはじめてですね。 ひとひとの会 の佐藤さん(岐阜のご当地タレントのやながせゆっこさんのマネージャーもされている)のイベントで2回描かせてもらって、それから岐阜を拠点に武者修行的に全国をライブペインティングで回りました。2014年に岐阜に帰ってきて、活動していくのちアトリエを構えさしていただいたり、柳ヶ瀬の高島屋南商店街を路上アートギャラリーとし県内外の16名の作家様にもご協力いただき描かせてもらいました。4年間で総数53作品が展示されてましたね。
ーライブペインティングで武者修行というのはすごいですね。ご自身で描かせてもらうところを探して、飛び込んでいくんですか?
そうですね。ライブペイントでは売り込んだりし実力が上の方々と一緒に描けるイベントに積極的に参加しました。壁画では出来高チップで描かせてもらいチップをいただいて、飲食代など旅費はまかなえました。腕に技術を持っていてよかったと思いますね。
ーブロックの様な模様はいつごろから表現の中にでてきたのでしょう?
絵を本格的に描き始めてから、本格的に活動し始めて一年しないうちに炎を単調化した模様で描き始めましたね。いつも考えるんですけど、俺は小さい頃からやっていること変わらないんだろうなと思います。表現したいものが子供の頃とまったく一緒なんですよね。最近では、神様を描いているんです。インド神話のガルーダや中国は儒教の龍やアメリカのアステカ神話の豹や蛇などの神様を描いたり、シリーズものを描くのが好きなんですよね。振り返ると、子供のころも統一感を持たせるためにシリーズ的に描いていたんですよ。
ーどういうものを描いていたんですか?
昔、デジモン(デジタルモンスター:バンダイが発売した育成ゲーム)が流行っていて、16ビットのデジモンの絵をずっと描き続けていたことがありました。紙をかき集めたら、分厚くてびっくりしました(笑)
ーそういう流れがあって、今に繋がっているんですね。(いただいたポストカードにさる
ぼぼの絵もあり)さるぼぼの絵も模様が入って面白いですね。
そうですね。高山での企画で描いたやつなんですが、岐阜らしいからいいですね。
G-SHOCKのホームページバナー作成やアーバンリサーチとの仕事でさらなる飛躍
ーG-SHOCKともコラボされているんですか?
5年前に、G-SHOCKも関わっているTiC TAC(渋谷のパルコや名古屋の高島屋ゲートタワーにも入っている)という時計屋さんのコンペに応募したときに、最優秀賞をいただきました。全国から25歳以下の作家の作品を募集された若手の登竜門的なコンペでした。そのあとにG-SHOCKのホームページバナーを作らせてもらいました。
ーTwitterで木彫りのクマの作品を観させていただきましたが、アーバンリサーチとも仕事されているんですか?
元々は家‘s様のアップサイクル企画で木彫り熊にオリジナルペイントを施したのが始まりです。その繋がりでアーバンリサーチ様でのポップストアが実現し、木彫りの熊との連動でアーバンリサーチ様で使わなくなったハンガーへのペイントもご依頼いただきました。
ー木彫りのクマにペイントというのが面白い発想ですね。
そうですね。家‘s様のコンセプトがアップサイクルで使わなくなった家具を再利用して
ます。使わなくなった木彫りの熊にアートを施しまた使っていただく企画にとても共感
して参加しました。ですが、あのペイントは本当に大変でした。木彫りのクマってすご
いごつごつで、筆でペイントするときに(大変で)泣きたくなりました(笑)。
URBAN RESEARCH DOORS 南船場店に併設するキュレーションスペース「DOORS HOUSE」にて、“THE GOODLAND MARKET (ザ グッドランド マーケット)” pop upを開催しています。
木彫り熊や、ハンガーが展示販売されてます。
お近くの方はぜひ足をお運びください。 pic.twitter.com/9vlbEMNfeL— MADBLAST HIRO (@HIROMADBLAST) August 25, 2020
(アーバンリサーチ様での販売は終了していませんが、展示は終了いたしました。)
ー作品を(ホームページなどで)見させていただきましたが、動物や昆虫をテーマにしたものが多いようですね。
野生的なものが好きっていうのはありますね。模様っていうジャンルで、そこを起点にしていますね。左右反転にしたときのデザイン性がかっこいいものを描いていきたいなと思っています。
ーそのほかのテーマで、例えば人を描いたりとかは興味あるんですか?
もっと表現力を養っていきたいですね。この間制作した作品で、風神雷神を模様風で描いたんですが面白いものが描けたと思うので、今後表現力を磨いて描いていけたらと思います。
ー今でも十分描く技術もあると思うんですが。
模様を使って男性のごつごつ感は描きやすいんですが、女性のしなやかさを同様に表現することが難しいなと思っていて、それが描けるようになれば一皮剥けたかなと思えると思います。
ー今、描いているのは自分が描きたいものより、依頼されたものを手掛けることが多いのですか?
今は、依頼されたのものが重なって多くなっていますね。ご依頼があればやらせていただきます。
ーYOUTUBEの動画もアップされていますね。
基本、セルフプロデュースなので写真や動画もだいたいは自分で制作しています。写真家の久保倉千明さんにイベント時、写真を撮っていただくこともありSNSのプロフィールは全部この方の写真ですね。ホームページやSNSでの発信もしています。今回の壁画の動画は、絵の具メーカーのリキテックスさんに画材協賛いただいていることもあって、メーカーさんからも評価いただいています。
世界を旅して描いてみたい
ー今後のご自身の活動での目標はありますか?
世界を旅しながら、絵を描けたら最高ですね。日本の中部地方や関西地方を中心に武者修行みたいな感じで(壁画やライブペイントで)回っていましたが、海外はほとんどないので、いろいろな地域を回ってみたいですね。イギリスやエジプト、マレーシアやサイパンなどでの話はあったりしたんですが、実現はしてませんね。これから是非行けたらいいなと思います。
ー年内の活動の予定はありますか?
ジャパンライブアートミーティングというイベントで、オンラインライブペイントが11月末にあります。岐阜市の繊維問屋まつりが開催されれば、関わることはあるかもしれません。
ー海外に行かれて、さらに表現の幅が広がった【Madblast Hiro】の作品が見られるこ
とを楽しみにしています。今回は、インタビューにご協力いただき、ありがとうございま
した。
Madblast HIRO プロフィール
岐阜を拠点に壁画制作・ライブペイント・展示の活動を全国で行う。柳ケ瀬にも多
数壁画制作を残すほか、G-SHOCKへのイラスト提供、アトリエ兼ギャラリー「inceptionbase"himitsukichi"」の立ち上げも行った。独自の模様を積み上げる表現を突き詰める。
【おまけ】Madblast HIROさんに質問
個人的に聞きたい質問
Q0.好きなアーティストは?
A. OLIVEOIL
Q1.影響を受けたものはありますか?
A. レゴのようなカラフルなおもちゃのブロック
Q2.好きな音楽は?
A. J-HIPHOP
Q3.好きな映画は?
A. インセプション
Q4.好きな本は?
A. 神話に関する本
Q5.好きな有名人は?
A.トム・ハーディ/アン・ハサウェイ
Q6.影響を受けたものは?
A.(幼少期に遊んだ)カラフルなブロックのおもちゃ
Q7.座右の銘は?
A.為せば成る
Q8.尊敬する人は?
A.美術家 中島法晃さん/画家 新井真允子さん
Q9.嫌いなことは?
A.人を不幸にする嘘をつくこと
Q10.もし、ひとつだけ願い事が叶うとしたら?
A.どこでもドアがほしい
岐阜について質問
Q1.岐阜のおススメスポットは?
A.株杉の森(関市)
Q2.岐阜のおススメ喫茶店・珈琲店は?
A.いしぐれ珈琲(柳ヶ瀬)
Q3.岐阜のおススメ飲食店は?
A.ヴェリス(玉宮)(残念ながら2020年9月末に店の撤退をするらしいです。)
Q4.岐阜で好きな町・エリアは?
A.柳ヶ瀬・玉宮
Q5.岐阜で好きな有名人は?
A.高橋尚子さん
Q6.岐阜の人で会いたい人は?
A.ROAMCOUCH 小川亮 さん
Q7.岐阜の好きなところ?
A.みんな優しい、情が深い
Q8.岐阜のきらいなところは?
A.(物事に対して)おっくう、腰が重いひとが多い
Q9.岐阜をひと言でいうなら?
A.自然が豊か
Madblast HIROさん、ご協力ありがとうございました。
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